アーティストインタビュー

曲が生まれた背景を知らずして本質を表現することはできない

原田英代(ピアニスト)
2014年11月27日 ワンダフル oneアワー出演
ベルリンを拠点にヨーロッパで活躍する実力派ピアニスト、原田英代さんがチャイコフスキー、ラフマニノフの小品を中心に演奏するリサイタルが11月27日、白寿ホールにて開催されます。クラシックの聖地、ヨーロッパで活躍し、ロシア・ピアニズムの薫陶を受けた原田さんに、ロシア音楽の真髄についてお話を伺いました。 (聞き手:Hakuju Hall支配人 原浩之)

原田さんの演奏を日本で聞くことはめったにできないのですが、今回は白寿ホールに登場していただけるということで、とても光栄です。

原田

こちらこそありがとうございます。先ほど弾き込みをさせていただきましたが、やわらかくて丸みのある響きが出るホールですね。人間の肉声に近い音が出るので、演奏した音が素直に伝わりやすいと感じました。

白寿ホールは、今年で11年目になりますが、音響にこだわったクラシック専用ホールということで、すべてに音響を優先させた設計をしました。

原田

素晴らしいですね。実は、ロシアのビアニズムの特徴のひとつが“響き”です。ロシア音楽は重厚感があると言われますが、それはロシア最高峰のモスクワ音楽院が持つホールが非常に残響の多いホールのため、その中で丸みのある豊かな響きを出すには、音に核が必要だからです。

バックボーンを知ることは大切ですね。ところで、今回のプログラムは、どのように選曲されたのですか?

原田

グリーグ、チャイコフスキー、ラフマニノフ、どれも情景が浮かぶような曲なので、演奏会を聞き終わったときに、1冊の絵本を読んだような気持ちになってもらえたら嬉しいです。

チャイコフスキーとラフマニノフはロシアの作曲家ですね。

原田

そうです。約30歳年上のチャイコフスキーは若いラフマニノフをとても応援していました。ラフマニノフにとってはそれがとても励みになっていたそうです。また、同年代のグリークとラフマニノフも仲が良かったようです。チャイコフスキーやラフマニノフは、ロシア人の感覚を知らなければ表現できません。雄大なロシアの大地で育ったロシアの作曲家たちは、うねりを感じるようなダイナミックさを曲にも込めたのです。

譜面の裏側に書かれたことをいかに表現できるかが大切ですね。

原田

ええ。演奏中は「自分」をなくすと、その曲の本質が出てきます。演奏者は虚体であって、出てくるものが実像。そう考えて演奏しています。

※株式会社白寿生科学研究所ユーザー情報誌「ヘルシーメイツ」2014年秋号から転載