アーティストインタビュー

音の道が見える貴重なホールです

望月哲也(テノール)
美声を響かせる男声ユニットIL DEVEのメンバーであり、リリックテナーとして大人気の望月哲也さん。
5月8日、新たにスタートする「Hakujuの歌曲」シリーズ、第1回目「春に歌う~ホルンと共に」の出演にあたり、音楽、そしてステージへの想いについて語っていただきました。

新シリーズ「Hakujuの歌曲」は、オペラ歌手が歌曲だけを歌うコンサートです。多くのオペラ歌手の皆さんからの要望でスタートしましたが、その第一回目ということで、楽しみです。

望月

本当にいい企画だと思います。ハクジュホールでは「ギター・フェスタ」を15年間続けておられますが、それは繊細な音を表現するギターという楽器に最適なホールだからだと思うんです。歌も同じように、一度ハクジュホールで声を出してみると、音の通る道が見えるので、歌い手なら、誰もがハクジュホールで歌いたいなと思いますよ。

ピアニッシモ(ごく弱い音)も聴こえると、皆さんから言われます。

望月

そうなんです。ピアニッシモを出すときは固い芯がないと音として通りませんが、このホールでそのピアニッシモを出してあげると、音の道がピーンと見えるんですよ。そして、その周りに柔らかい美味しいお肉がつくんです……。

やっぱり、お肉ですね(笑)

望月

間違えました(笑)。音の道の周りにほんのりと音の響きがつくんです。響きすぎるホールだと、響きに酔いすぎて歌い手が負けることがありますが、ハクジュホールはそれがない。ちょうどいい具合に音が響くホールだと思います。

オペラと歌曲、それぞれにどんな魅力がありますか?

望月

オペラと歌曲は同じ歌でも表現が全く違います。オペラは声量が要求されて、お芝居も入るので、体を使う表現がプラスされますが、歌曲はピアノなどの楽器と向き合って詩の世界を表現するもの。繊細な声色や表情も必要になります。違う表現が必要とされるからこそ、どちらも聞いてほしいし、声楽家自身も両方に挑戦することで相乗効果が得られると思うんです。

歌曲もいろいろな国のものがありますが、「Hakujuの歌曲」では、好きな歌を歌ってもらおうと思っています。

望月

歌手のカラーを出させてもらえるので、ありがたいです。今回はドイツ語、日本語、イタリア語、英語の歌曲を歌いますが、東京フィルハーモニー交響楽団のホルン奏者、髙橋臣宜さんと共に奏でますので、ホルンとテノールの相性の良さを聞いてほしいなと思います。

ホルンやチェロは人の声に一番近い楽器ですよね。

望月

そうなんです。選曲したブリテンの「セレナード」は、ブリテンがいた時代に、そのパートナーのテノール歌手、ピーター・ピアーズと、名ホルン奏者デニス・ブレインがいたからこそ生まれた曲。そういった埋もれている素晴らしい作品もぜひ知っていただきたいですね。

最後にコロナ禍ではありますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。

望月

いろいろと制限が多く気持ちも沈みがちかもしれませんが、僕たちの活動をきっかけに、元気が出たり、勇気が湧いたりなど、何かしら力になれたら嬉しいです。

ありがとうございます。春に望月さんの豊麗な歌声が聞けることを楽しみにしています。

※株式会社白寿生科学研究所ユーザー情報誌「ヘルシーメイツ」2021年春号から転載