原支配人による公演レビュー

2019年04月13日 (土)
【原支配人による公演レビュー】4/6(土)「望月哲也 三大歌曲シリーズ vol.3 <白鳥の歌>」

4月6日にテノール望月哲也の、ギター伴奏によるシューベルトの三大歌曲シリーズの第3回、白鳥の歌が無事終了致しました。ギター伴奏による「白鳥の歌」は世界初演でした。
第1回「冬の旅」を福田進一伴奏、第2回「美しき水車小屋の娘」を朴葵姫伴奏と、名手と積み重ねて来た本シリーズの最難関が今回でした。
元々ピアノ伴奏で、二手十指で行なっていたものを、左手一本四指で伴奏するという事に当然無理があり、本「白鳥の歌」に関しては企画立ち上げ当初から一本ギター伴奏では無理。という、ハナから先送り的な、きっとその時までには何とかなるだろう。という、全く根拠のない楽観的向き合いぶりでした。今回伴奏の松尾俊介さんには相当前から編曲をお願いしていて、彼曰く、編曲していて気が狂いそうになった。どこかで「水車小屋」の伴奏をやって、シューベルトになりきってシューベルトが降臨して来たような気持ちになったら、太いドの弦を張ったギターを数曲持ち替えすれば一本で行けると閃いた。とプロセスでお話聞いていまして、本当に苦労、難産の上で生まれた編曲でした。是非出版、再演されて、この名曲がギターピースの誕生により再演回数が増えることを祈ります。
アーティストおふたりの向き合いは尋常でなく、4月第1週だけで3回もホール合わせをしました。ここまで真摯にコンサートに向かい合って下さる事への感謝と、これだけの内容何とか満席のお客様に聴いて頂きたいと、ホールメンバーも最後まで必死に告知させて貰いました。
そして本番当日は、リハーサルで万事を尽くしたお陰か、アーティスト達からも笑顔が見えながらのコンサートになり、リラックスした感じで進んでいきました。歌曲の醍醐味の1つである、文章の抑揚とメロディーの抑揚をお互いに時には見つめ合いながら、時にはギターの松尾さんも小声で歌っているかのように口が動き、その全ては集中力の賜物という感じでした。あっという間でした。
終了後、本編、「セレナーデ」の短調長調の切り替え時に少々ミスがあった事を告知された上でのアンコール。そこでの壇上でのやり取りは大変微笑ましく、会場は一気に和みました。名曲「セレナーデ」を3回も聴けて、個人的にも幸せになれました。
終わってみれば、ギター伴奏シューベルト三大歌曲という試みは史上初。このようなチャレンジをハクジュでやると決断下さった望月さんと、もの凄い準備をして下さったギタリストの皆様に心から感謝いたします。

【出演】
望月哲也(テノール)
松尾俊介(ギター)

【プログラム】
●シューベルト(松尾俊介編):月に寄せて D.468
●シューベルト(ラゴスニック編):羊飼いの嘆きの歌 D.121
●シューベルト(ラゴスニック編):のばら D.257
●シューベルト(ディアベッリ編):魔王 D.328
●シューベルト(松尾俊介編):歌曲集「白鳥の歌」D.957

<アンコール曲>
●シューベルト(松尾俊介編):歌曲集「白鳥の歌」D.957 より セレナーデ

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