原支配人による公演レビュー

2023年01月12日 (木)
【原支配人による公演レビュー】2022年12月9日(火) TRAGIC TRILOGY Ⅱ 「トスカ」

悲劇的なオペラ3作品を1年に1本ずつ、同じ出演者で上演するというシリーズの第2回が行われました。
演出・脚本の田尾下哲さんとは長きに渡り色々な企画を行なって来ました。オペラは原作、脚本、作曲、舞台演出、舞台装置、オーケストラ、指揮者、歌唱等が最大限にクロスオーバーしています。それらを最小限にしたらハクジュホールでの上演も可能なのではないかと無茶な提案をしたところ、田尾下さんは想定を大幅に上回る内容で舞台を作ってくださいました。昨年の「椿姫」は原作とオペラの筋が違うという事で、原作に忠実な脚本になったり、今回は舞台装置の演出が強まったり、1公演に納めるには勿体ないまでの仕込み、稽古が行われたことと思います。
「トスカ」をトスカ、カヴァラドッシ、スカルピアの3人で描き、アンジェロッティやスポレッタがいない状態でもオペラとして成り立つのか、また、第3幕はどのような演出になるかというのは、本業のために稽古の立ち会いが出来なかった私にとっての謎でした。しかしそこは天才田尾下さん、さすがの演出でした。幕が変わるごとにトスカ役の青木エマさん、カヴァラドッシ役の城さんの衣装がどんどん変わって行き、物語の進行と見事に重なっていました。信じて頂けるかわかりませんが、音楽監督・ピアノの園田隆一郎さん、青木エマさん、城宏憲さん、大西宇宙さんの4名で、更に室内楽ホールのハクジュホールで、見事なオペラが本当に成立してしまうのです。流れるようにお話が展開して、第3幕のカヴァラドッシが撃ち殺され、そのままトスカが身を投げるシーンまであっという間でした。
次回の「蝶々夫人」で、このメンバーによる全3回のオリジナル性溢れるオペラシリーズは終了です。しかし演出も内容も充実したこのシリーズは、地方を含めた他のホールでも上演されて欲しいと感じています。こういう新しい試みがこのまま終わってしまうのは本当に惜しいです。どこかで再演されるなら、より多くの、満員のお客様に見て貰いたいと感じています。
シリーズ内容をご理解頂き、今回も事前レクチャーをさせて頂きました朝日カルチャー新宿教室様には大変お世話になりました。

2022年12月9日(火) TRAGIC TRILOGY Ⅱ 「トスカ」 15:00開演
[出演]
青木エマ(トスカ)
城宏憲(カヴァラドッシ)
大西宇宙(スカルピア)

園田隆一郎(音楽監督 / ピアノ)
田尾下哲(演出 / 脚本)

横山希(稽古ピアノ)

[プログラム]
プッチーニ:歌劇「トスカ」 全3幕

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