原支配人による公演レビュー
【原支配人による公演レビュー】
2023年6月30日(金) 巡礼の旅 第5回 「絶望、そして歓び」 ~阪田知樹と辿るベートーヴェンとリストの軌跡
6月30日、ピアニスト阪田知樹さんの「巡礼の旅」第5回が行われました。今回もプレトークが18時45分よりあり、その時間にはお客様のほぼ全員が集まっていらしたのが、このシリーズの人気と注目度の高さを表していると思いました。おかげさまでプラチナチケットとなっており、何とかなりませんかというお声をいただくことがございます。しかし、こんなにも難易度が高く集中力を必要とする公演を2回も行うのは非常に難しく、1公演のみとさせていただいています。2021年にシリーズが開始し3年半。リスト作品の演奏機会を日本のクラシック音楽業界に増やしていきたいと、リスト国際ピアノコンクール優勝の阪田さんに相談をしてからもう5年近く経過しています。聞くところによると、交響曲 第5番、第6番、第7番はベートーヴェンの交響曲の中で人気が高く、リストも結構弾いていたそうです。このシリーズの折り返しとなる今回は、まさに“山”だったのではないかと思います。
プログラムの前半はリストの巡礼の年 第2年 「イタリア」より “ペトラルカのソネット” 3曲と、“ダンテを読んで―ソナタ風幻想曲”でした。いきなり超難曲の連続で、前半だけでも場内の雰囲気はかなり盛り上がっておりました。ご本人いわく“ダンテを読んで”は高校生のころから弾いており、いわゆる持ち曲だそうです。そして後半は交響曲 第5番 「運命」。これまで交響曲 第1番、第2番、第4番をピアノ編曲で聴いた時はピアノ・ソナタを壮大にしたような印象でしたが、第5番は曲の作りや構成が全く異なることがすぐに分かりました。誰もが耳にしたことのある旋律をピアノで弾くという難しさがありながらも、手が2本、指が10本しかないとは思えないほどの複雑な譜面、打鍵の多さ、凄まじい集中力と流麗なテクニックに客席が引き込まれていくのを感じました。壮大な第4楽章を終えた瞬間、コロナ禍以来のブラボー!と数十人のスタンディング、大きな拍手に感慨深い気持ちになりました。アンコールはベートーヴェンのピアノ・ソナタ 第8番 「悲愴」より 第2楽章で気持ちを静めるように終わりました。本編とのコントラストが素晴らしく、お客様も満足を通り越して興奮のままに帰路につかれたのではないかと思います。
余談ですが、Hakuju Hallを運営する白寿生科学研究所は6月末決算のため、コロナ禍で苦しいときもございましたが、本日、このコンサートの立ち会いで良い期末を迎えられたと心から思うことが出来ました。
阪田さん、ジャパン・アーツさん、お客様に感謝を申し上げます。
2023年6月30日(金) 巡礼の旅 第5回 「絶望、そして歓び」 ~阪田知樹と辿るベートーヴェンとリストの軌跡
[出演]
阪田知樹 (ピアノ)
[プログラム]
F.リスト:巡礼の年 第2年 「イタリア」 S.161/R.10 より
第4曲 “ペトラルカのソネット 第47番”
第5曲 “ペトラルカのソネット 第104番”
第6曲 “ペトラルカのソネット 第123番”
第7曲 “ダンテを読んで―ソナタ風幻想曲”
L.v.ベートーヴェン/F.リスト:交響曲 第5番 ハ短調 S.464/R.128 「運命」
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