原支配人による公演レビュー
【原支配人による公演レビュー】
2023年10月14日(土) 大谷康子のヴァイオリン賛歌 第7回 <好奇心>
大谷康子さんはハクジュホールにとって一番のレジデントアーティストと言っても過言ではありません。大谷さんと春風亭小朝さんがMCを務め、毎週土曜日にBSテレ東で放送している「おんがく交差点」の収録は全てハクジュホールで行われています。そして来年で第5回となる白寿こどもヴァイオリンコンクールの審査委員を務めてくださっており、さらに他にあまり類を見ない10年がかりのシリーズ「大谷康子のヴァイオリン賛歌」にご出演いただいております(コロナ禍に一度延期したため11年がかりとなりました)。
今回はピアノに天才・岡田奏さんをお迎えしてのコンサートでした。テーマは「好奇心」で、好奇心あふれる大谷さんがお客様の好奇心をそそるような曲を選んでくださいました。MCで大谷さんが全ての曲を解説してくださるのに加え、企画構成協力の伊藤裕太様による分かりやすい曲目解説があり、開演中も客席を明るくしてプログラムを見やすくするという、本公演ならではの工夫があります。また、プログラムには下記のメッセージが書かれていて、アーティストからお客様への心のこもったお気遣いが本当に伝わって来ます。
「大谷康子のヴァイオリン賛歌」はクラシック音楽のファン層を広げたいと、学生時代から熱い思いを抱き、多彩な活動を続けてきた大谷康子が、Hakuju Hallのお客様と一緒に築いていく10年がかりのプロジェクトです。ソロや室内楽で今最も注目されているピアニストの岡田奏さんを迎えてお届けする第7回のテーマは「好奇心」。
〈好奇心の塊〉とも言える大谷の興味は演劇、歌舞伎などお芝居鑑賞、美術館めぐり、船、飛行機、鉄道などの乗り物、特にこだわりがあるほど詳しいお菓子の世界……。興味は尽きません。
知りたい、覚えたい、試したい! 一日が24時間では全く足りないのが悩みの種。その隙間時間を縫っては、好奇心を満たしています。
今回はその、興味のある分野を音楽に結びつけてみました! めずらしい作品も続々発掘。またまたおもしろい発見。みなさまの好奇心とも重なるものが多いことでしょう。
演劇…プロコフィエフ作曲「ロミオとジュリエット」組曲、船…フランス海軍士官でもあったジャン・クラ作曲「ハバネラ」、美術…レスピーギ作曲「五つの小品」など。
私はナビゲーターとなり、皆様と人生を大いに楽しみましょう。
大谷康子
コンサートはいつものユーモア溢れるMCで笑いを誘いながらの進行でした。クラはフランス人作曲家でありながら海軍士官だったそうです。また、プーランクの「ヴァイオリン・ソナタ」の解説では、平和を愛する大谷さんから平和への願いのお話がありました。このソナタには「ガルシア・ロルカの思い出に」という副題があり、スペイン内乱の時にファシストにより銃殺された詩人・ロルカの「六本の弦」という詩が第2楽章の冒頭に掲げられているそうです。そして第3楽章の最後にはロルカが殺される事を暗示するメロディがあるという解説と共に、抜粋して演奏されました。プーランクといえばフランスのエスプリというイメージなのですが、この曲は凄惨な史実に基づいていると知りました。
ピアノの岡田奏さんとは5年ほど前から共演を考えていらしたそうで、プロコフィエフの「ロミオとジュリエット」の細かいパッセージなど、ダイナミクスレンジもニュアンスも素晴らしく、大谷さんの演奏を見事にアシストされていました。素晴らしい演奏でした。翌日に名古屋の宗次ホールでも同じプログラムを演奏されたそうで、宗次ホールの音響に合うニュアンスをつけた良いコンサートになっただろうなと思いました。
大谷さん、来年もよろしくお願いいたします。また、準備から曲目解説まで音楽プロデューサーのように動いてくださいました伊藤裕太様にも感謝申し上げます。
2023年10月14日(土) 大谷康子のヴァイオリン賛歌 第7回 <好奇心> 15:00開演
[出演]
大谷康子(ヴァイオリン) 岡田奏(ピアノ)
[プログラム]
O.レスピーギ:5つの小品
K.シマノフスキ : 「神話」 op.30 より 第1曲 “アレトゥーサの泉”
S.プロコフィエフ(L.バイチ編):「ロミオとジュリエット」 op.64
P.サラサーテ:ファウストの思い出
J.クラ:ハバネラ
F.プーランク:ヴァイオリン・ソナタ
<アンコール>
F.プーランク:愛の小径
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