原支配人による公演レビュー

2024年12月26日 (木)

【原支配人による公演レビュー】
2024年9月20日(金) カルテット・アマービレ BRAHMS Plus 〈 Ⅴ 〉

カルテット・アマービレとは、浅からぬ長いご縁があります。ファーストの篠原さんとチェロの笹沼さんは結成前からの知り合いです。篠原さんは当社ビルの1階にベーゼンドルファーのピアノが置いてあった時のトライアルコンサートへのご出演、笹沼さんは私がホール企画に最初に関わったチェロ・コレクションの第1回にご出演いただいてからのお付き合いです。そのお二人がメンバーの、カルテット・アマービレがミュンヘン国際コンクールで3位を受賞した時には、これは並々ならぬご縁だと感じ、リクライニング・コンサートにご出演いただき、そしてこの企画へと進んでまいりました。
この企画の特徴は
1.ブラームスの弦楽四重奏3曲、弦楽五重奏2曲、弦楽六重奏2曲、クラリネット五重奏、ピアノ五重奏を1曲ずつ取り上げた公演を年に一回行い、出来る限り継続する。
2.人生の大先輩をゲストにお呼びしてメンバーが経験値を高める。
3.ブラームスの弦楽四重奏の時は他の曲に必ずゲストを呼ぶ。
4.前曲には知名度が少なめの小品を必ず入れて演奏機会を作る。
5.ピアノ・トリオやピアノ四重奏のようにアマービレのメンバーが欠ける曲はやらない。
というものでした。

これらの約束の下、弦楽六重奏曲 第1番とシェーンベルクの「浄夜」は堤剛先生・磯村和英先生、ピアノ五重奏曲の時は清水和音先生、弦楽四重奏曲 第3番とドヴォルザークの弦楽六重奏曲は鈴木康浩氏・山﨑伸子先生、弦楽五重奏 第1番の時は、N響首席の村上淳一郎氏という豪華なゲストをお迎えして来ました。そして今回は弦楽四重奏 第1番とメインはショーソンのヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲を演奏、ゲストはピアノに練木繁夫先生、ヴァイオリンに徳永二男先生という大物をゲストにお迎えしました。    
少々私事になりますが、私はヴァイオリン・ヴィオラを嗜むので、プログラム1曲目のヴォルフのイタリアン・セレナーデは、以前指揮者なしのオーケストラである東京アカデミーオーケストラで演奏経験があるのですが、本当に格好良くて好きな曲でした。今回のブラームスの四重奏曲 第1番については、素晴らしいメロディもさることながら音の粒を揃えないといけない中々な難曲だと感じていました(第2番の方が演奏機会は多いと思われます)。
このアマービレのシリーズはハクジュホールの主催公演で、コロナ禍での延期がなかったという奇跡的なシリーズ公演です。個人的なお付き合いを通して、音楽以外の色々な相談に乗る事もあり、20代前半の頃から、親と言えば言い過ぎですが親戚のおじさん位の気持ちで見守っておりました。結成して10年近く経ち、王子ホールでベートーヴェンの弦楽四重奏チクルスが始まり、また地方の音楽祭やアルゲリッチ氏との共演など活躍の場が広がり、日本のクラシック音楽シーンの中心的存在になって来ており、カルテットに掛けるエネルギーや時間のバランスが難しい時期でした。ホール企画として、仕事量の調整をしながら出来る限り定期的に開催するという位置づけと考え、カルテットとして苦しい状況であった昨年は、優先順位と負担のバランスが難しいようならこの企画を中止しても良いという提案をしました。その後、アマービレのメンバーは話し合い、王子ホールのベートーヴェンチクルスとハクジュのBRAHMS Plusを四重奏活動の柱にするという結論を出してくださいました。
前回はそんな苦しみの中での本番でしたが、今回は自らの力で難局を乗り越えてその悩みを解消し、躍動感に溢れて充実した演奏だったと思います。その姿を見て、私はこれまで以上にジーンと胸が熱くなりました。
打ち上げには練木先生、徳永先生もご参加下さいました。メンバーが桐朋の高校生時代から師匠であるお二方との共演、色んな悩みを乗り越えたこのタイミングでゲストにお迎え出来たのは最高でした。そのような話も出て『先生、立派になった私達を見て下さい!』という思いも伝わり、とても温かいコンサートになったと思います。
今年からファーストの篠原悠那さんが日本センチュリー交響楽団のコンサートマスター、セカンドの北田千尋さんが広島交響楽団のコンサートマスターに就任。益々日本の音楽シーンで中心となっていく皆さんを応援しています。
第6回は2025年7~12月のどこかで行います。次回はどんなゲストを迎えるか、どんな成長を遂げられて再会出来るか、今から楽しみです。

2024年9月20日(金)19:00 開演
カルテット・アマービレ BRAHMS Plus 〈 Ⅴ 〉
ブラームスを主軸に新世代を牽引する弦楽四重奏団の意欲シリーズ 第5弾 
徳永二男と練木繁夫をゲストに迎えての共演が実現!

[出演]
<ゲスト>
徳永二男(ヴァイオリン) 練木繁夫 (ピアノ)
<カルテット・アマービレ>
篠原悠那(ヴァイオリン) 北田千尋(ヴァイオリン) 中恵菜(ヴィオラ) 笹沼樹(チェロ)

[曲目]
H.ヴォルフ: セレナーデ ト長調 “イタリアン・セレナーデ”  
J.ブラームス: 弦楽四重奏曲 第1番 ハ短調 op.51-1  
E.ショーソン: ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲 ニ長調 op.21

<アンコール曲>
E.ショーソン: ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲 ニ長調 op.21 第2楽章


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