原支配人による公演レビュー

2024年12月28日 (土)

【原支配人による公演レビュー】
2024年10月11日(金) 第173回 リクライニング・コンサート 瀬﨑明日香(ヴァイオリン)&イリーナ・メジューエワ(ピアノ)

瀬﨑明日香さんとの出会いは、嘗て私が団長を務めていたアマチュアオーケストラ、アマデウス・ソサエティ管弦楽団で2005年6月、ブラームスの「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」に取り組んだ際にソリストとしてご出演頂いたのがきっかけです。当時瀬﨑さんはフランス留学から帰国したばかりで、最初の本番がアマデウスだったと記憶しています。ソリストとして練習にいらして頂いた際、団員に音楽を伝えて下さるときの表現がとても叙情的で、表現における音楽の深みも備え持っていらしたので、暫くアマデウスの弦楽器のトレーニングをお願いしました。その後、瀬﨑さんをはじめアマデウス在籍中にお付き合い頂いたアーティストの方々にご出演のオファーを差し上げるタイミングが無く、瀬﨑さんともお目にかかる機会もないまま時が過ぎてしまいました。その間、イ・ムジチを追いかけてイタリアに再度留学し直したお話も、つい最近になって伺ったほどです。
ようやく再会が叶ったのは、豊島区の故高野区長と親しくさせて頂いた関係で豊島区のイベントに参加した時でした。コバケンとその仲間たちオーケストラでコンサートミストレスをなさっていた瀬﨑さんをお見かけしたのです。思い返せば15年以上の空白期間を経ての再会でした。「リクライニング・コンサート」といえば若手登竜門的イメージがありますが、15年遅れのオファーにも関わらず円熟期を迎える瀬﨑さんには快くお受け頂き、感謝の言葉もございません。曲目は、留学先のフランスかイタリアものを出されると思いましたが、とある方のご紹介からロシア人のイリーナ・メジューエワさんとの共演というお話が出て、瀬﨑明日香&イリーナ・メジューエワ デュオリサイタルという形になり、曲目は全てロシア音楽になりました。作曲家で言うとロシア5人組からキュイとリムスキー・コルサコフ、グラズノフ、ラフマニノフ、メトネルというロシア王政時代に人生の多くを生きた方々のプログラムでした。正にロシア音楽というべき構成で、最初と最後はヴァイオリン・ソナタで、キュイの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」と、メトネルの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第1番」を置き、間にキュイ、リムスキー・コルサコフ、グラズノフ、ラフマニノフの小品4曲が並びました。叙情的な全ての曲を切れ目なく通しで演奏され、まるで1つの組曲のようでした。どの作品も全ての音の響きが消えてなくなるまで大切に演奏なさっていて、音楽と丁寧に向き合っていらっしゃることが確りと伝わってきました。
夜公演は金曜日という事もあり、都内での公演も多く難しいところもありましたが、昼公演は完売となりました。瀬﨑さんは本当に知性的な方で、コンサート後に、クラシックというジャンルを超えて、音楽だけではなく美術や文学といった、領域を超えたプログラムのコーディネートが出来ないかというお話をなさっていました。実現できるかどうかは分かりませんが、目指さないことにはそういう大きな試みは成す事はないと思っております。15年の空白を埋める素晴らしい1日になりました。

2024年10月11日(金) 15:00 開演
第173回 リクライニング・コンサート 瀬﨑明日香(ヴァイオリン)&イリーナ・メジューエワ(ピアノ)

[出演]
瀬﨑明日香(ヴァイオリン) イリーナ・メジューエワ(ピアノ)

[プログラム]
C.キュイ:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 二長調 op.84  
C.キュイ:「万華鏡」op.50より 第9曲 “オリエンタル”
N.リムスキー=コルサコフ(クライスラー編):「シェエラザード」 op.35より 第3楽章 “若い王子と王女”
A.グラズノフ:瞑想曲 ニ長調 op.32
S.ラフマニノフ:ヴォカリーズ op.34-14
N.メトネル:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第1番 ロ短調 op.21

[アンコール曲]
N.リムスキー=コルサコフ : 熊蜂の飛行


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