原支配人による公演レビュー

2025年01月07日 (火)

【原支配人による公演レビュー】
2024年10月26日(土) 大谷康子のヴァイオリン賛歌 第8回 <日本>
― 聴衆の皆様とともに創りあげる10年プロジェクト ―

年に1回開催、10回シリーズ「大谷康子のヴァイオリン賛歌」。コロナで1年空いたので11年に渡るプロジェクトの第8回が行われました。今回は、会社経営者で大谷康子さんのコンサートにおいてプロデューサーをされている伊藤裕太社長のご尽力により、ハードルがとても高いアーツカウンシル東京という公益財団法人の助成金を得ることが出来ましたので、ゲストとしてピアノの山田武彦さん、箜篌(くご)という古代東アジアで使われた楽器を国立劇場からお借りして、ハープ界の重鎮である篠﨑史子先生、箏・三弦の藤本昭子さん、箏の日原藤花維柯さん、更には増上寺式師会の皆様、また若手中堅のヴァイオリニスト3名にご出演頂き、かなり規模の大きなコンサートになりました。その上、更に光栄な事に高円宮久子妃殿下にご来場を賜りました。
コンサートの内容を大谷さんのお話に沿って振り返りますと、大谷さんが大好きでたまらないヴァイオリンが日本に到達した過程において色々な人のご縁や決断を経て西洋音楽が日本に入って来たという歴史的なお話、そこに関わった先人たちがいるからこそ、大谷さんはじめ日本人アーティストが今日、日本でヴァイオリンを演奏できる環境になったという解説を頂きました。コンサートはこのような事実の振り返り、先人への感謝を込めて音楽で綴るという、とても奥行きのある内容でした。大谷さんが語られるお話が素晴らし過ぎ、且つ中身が濃すぎてレビューだけでは語り切れませんが、幸田延という女性が西洋音楽を日本に持ち込むための最初の重要人物であった事、瀧廉太郎や貴志康一などの1900年代前半に欧州に渡って活躍し名を残した方々の曲をプログラムに入れた事はとても印象に残りました。
コンサートは、第1部<黎明>、第2部<発展>、第3部<融合>という当初の構成をわかりやすくご理解いただくため、急遽曲順を変更して行いました。ハープ界の第一人者篠﨑史子先生による箜篌(くご)という竪琴と大谷さんとのデュオ、西洋音楽が入り音楽取調掛の設置と関わった方々の作品、日本人による初のクラシック音楽作品と言われている幸田延の「ヴァイオリン・ソナタ 第1番」より第1楽章、三味線、箏との共演による「六段の調べ」、増上寺式師会の皆様による附楽とヴァイオリンの共演。なお増上寺僧侶はホール後方扉からご登場になり、ご登壇まで大本山増上寺のお札をばら撒きつつ、声明という仏教儀式での経文の朗唱を頂きながらの道行きでした。そしてその声明に合わせてヴァイオリンが演奏されるという、文章では説明し切れないような形でのコンサートでした。内容の濃さ、度肝を抜くような世界観が目の前に展開され、当ホールの歴史に残るコンサートの一つとなりました。

2024年10月26日(土)15:00 開演
大谷康子のヴァイオリン賛歌 第8回 <日本>
― 聴衆の皆様とともに創りあげる10年プロジェクト ―

[出演]
大谷康子(ヴァイオリン) 山田武彦(ピアノ) 
篠﨑史子(箜篌) 藤本昭子(三弦・箏) 日原藤花維柯(箏) 増上寺式師会(声明)
西本幸弘、新井貴盛、橘和美優(以上、ヴァイオリン)

[曲目](当日演奏順)
第1部 <黎明>
ヘルメスベルガー1世:舞踏会の情景
伊沢修二:小学唱歌集より 第1番「かをれ」 第2番「春山」
伊沢修二/R.ディットリヒ:小学唱歌集より 第17番「蝶々」
ヘルメスベルガー2世:「タランテッラとロマンス」 op.43より 第2曲 “ロマンス” 
ヒュンテン:夏の名残りのバラ
八橋検校:六段の調べ

第2部 <発展>  
幸田延:ソナタ 第1番 変ホ長調 より 第1楽章 
宮城道雄:春の海

第3部 <融合> 
佐々木冬彦:箜篌 紫の園に香るは…
菅野由弘:附楽 散華 & 伽陀
ブラームス:「F.A.E.ソナタ」より “スケルツォ”
瀧廉太郎/山田耕筰:哀詩 <荒城の月>を主題とする変奏曲
貴志康一:竹取物語 
武満徹:妖精の距離 
外山雄三:「ヴァイオリンとピアノのための日本民謡による組曲」より 第1楽章

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