原支配人による公演レビュー

2025年01月14日 (火)

【原支配人による公演レビュー】
2024年11月21日(木)ヴィオラ・コレクション

ここ数年で「~N響メンバーによる室内楽シリーズ~ N響チェンバー・ソロイスツ」がハクジュホールのシリーズとして定着し、お陰様でN響の団員に親しい方が増えてまいりました。そんな折、村上淳一郎さんが2021年にケルン放送交響楽団からN響にヴィオラ首席奏者として移籍されました。この「ヴィオラ・コレクション」は村上さんの音色とオーラ、演奏技術にハクジュホールのメンバーが惚れ込み、是非村上さんとヴィオラの企画を実現したいという想いが成就したものです。ヴィオラという楽器はヴァイオリンやチェロと同じヴァイオリン属の楽器で、音域はヴァイオリンとチェロの間になります。大きさが一律でなく同じヴィオラでも5センチ位大きさが違う場合もあり、1つ1つの楽器の音色がかなり違うというところがヴィオラの魅力です。
今回村上さんがイタリアとドイツに長くお住まいで、最近の若手をあまりご存知ないと伺いましたので、ハクジュホールにご縁があり、私とも親交のある日本フィル首席の安達真理さん、当時新日本フィル首席の中恵菜さんのお二人にもご参加頂き、ご出演者について4人で何時間も話し合いました。その結果、4人目としてレグルス・カルテットでご活躍中の山本周さんにご出演をオファーし、ヴィオラ業界としては本当に贅沢なメンバーによるヴィオラ4本のコンサートという前代未聞の企画が立ち上りました。
ヴィオラ4本のオリジナル曲は非常に少ないので、プログラムについては皆で知恵を絞りました。コンサートの一曲目となったモーツァルトの歌劇「魔笛」のヴィオラ四重奏版は8曲ありまして、2曲弾き終わる毎にファースト→フォース、フォース→サード、サード→セカンド、セカンド→ファーストと4人で時計と反対廻りに回って、異なる組み合わせで演奏しました。この時点で4本のヴィオラそれぞれの音色の特徴、違いや味わいが明らかになって、既にお客様の満足度は最高潮です。そしてプログラム中唯一のヴィオラオリジナル曲、ブリッジの「2つのヴィオラのためのラメント」を演奏しました。後半はバルトークの「44のヴァイオリン二重奏曲」の中から7曲抜粋。デュオの組み合わせは4人で6通り出来るので、異なる2名の組み合わせで6曲演奏し、最終曲“トランシルヴァニアの踊り”は二重奏を2名ずつ交代で演奏しました。一曲目から立って演奏していることもあり、演奏者の皆さんが踊りながら弾いているような感覚になり、物凄く迫力のあるビジュアルに圧倒されました。
林そよかさん編曲の映画音楽はヴァイオリンのハイポジションのような高音域で演奏され、耳馴染みのある有名な曲をお聴き頂きながらヴィオラのA線はこんな音も出るのかということをお客様にご実感頂けたのではないでしょうか。野平一郎先生編曲、バッハの「シャコンヌ」ではまた雰囲気がグッと変わり、集中力の方向も変化しながら深まりお客様が引き込まれていくのを感じ、素晴らしかったと思います。
企画当初は、初のヴィオラ4本による企画がお客様の共感を得られるのかという不安もありましたが、お陰様でチケットは完売となり、自ら挑戦を仕掛けた結果に感無量でした。そして当日お出でにならなかったお客様も殆どいらっしゃらなかったようで、まさに満席コンサートとなり、客席も熱気に包まれていました。今回初めてご一緒に演奏するメンバーもいらしたので、このようにヴァイオリン曲からの編曲や新曲で構成されたプログラムを演奏する上で、アンサンブルの精度向上のために相当回数のリハーサルを重ねたようです。
終了後の打ち上げで演奏者の皆さんから、「公演当日の朝、今日が終わるともう皆と演奏出来なくなるのだ」という寂寥感があったというお話を伺い、今まで立ち合った数多くのコンサートの中でも、未体験ゾーンに入った企画に携わることが出来、嬉しさがこみ上げました。今回関わって頂いた皆様に心から感謝申し上げます。
どうも有難うございました。

2024年11月21日(木)19:00開演
ヴィオラ・コレクション

[出演者]
村上淳一郎、安達真理、中恵菜、山本周(以上、ヴィオラ)

[プログラム]
W.A.モーツァルト(レ・キャトル・ヴィオロン編):歌劇「魔笛」より ~4つのヴィオラのための~
1. おいらは鳥刺し
2. なんと美しい絵姿
3. 復讐の心は地獄のように
4. 僧たちの行進
5. 恋を知る殿方は
6. 愛の喜びは露と消え
7. なんと力強い魔法の調べ
8. パ、パ、パ

F.ブリッジ:2つのヴィオラのためのラメント

B.バルトーク:44のヴァイオリン二重奏曲 Sz.98 BB104 より ~ヴィオラ二重奏~ 
No.21 新年のあいさつ
No.25 ハンガリーの歌
No.28 悲しみ
No.40 ワラキアの踊り
No.42 アラビアの歌
No.43 ピッツィカート
No.44 トランシルヴァニアの踊り 

H.マンシーニ(林そよか編):ひまわり
E.モリコーネ(林そよか編):「ニュー・シネマパラダイス」よりメインテーマ~初恋~愛のテーマ
C.チャップリン(林そよか編):スマイル
J.コスマ(林そよか編):枯葉

J.S.バッハ(野平一郎編):シャコンヌ ~4つのヴィオラのための(2000)

[アンコール]
W.A.モーツァルト(レ・キャトル・ヴィオロン編) : 歌劇「魔笛」より 恋を知る殿方は


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