原支配人による公演レビュー
【原支配人による公演レビュー】
2024年12月12日(木)
~N響メンバーによる室内楽シリーズ~ N響チェンバー・ソロイスツ
第7回 金管五重奏の煌めく響き
数年前に、NHK交響楽団を擁するNHKホール、東急文化村、ハクジュホール3館が奥渋エリアでの連携を模索しておりました。一定の成果はあったものの、NHKホールでは耐震工事期間があったこと、また文化村では現在、東急百貨店本店の閉館に伴い建物解体工事と建設があり、連携の状況も変わってきております。この「N響メンバーによる室内楽シリーズ」は21年の後半からスタートして手探り状態ながらも、N響との関係を維持し、半年に1回のペースで着実に公演を重ねてまいりました。
N響も代替わりが進むなか、当企画の楽員代表の方と話し合いを重ね、コンサートマスターだけでなく近い将来N響の中心的存在になるであろう若手の方をご推薦頂き、コンサートにご出演頂いております。話し合いの過程では私の希望もその時々でお聞き下さるのでありがたい限りです。過去6回は、小編成の室内楽だけでなく、マーラー「交響曲 第10番」の室内オーケストラ版や、管と弦のコラボでバロック、23名による弦楽合奏、また木管2番奏者による特殊管の演奏などそれぞれの楽器の音色を楽しんでいただく様々な企画を行いました。そして今回は満を持して金管五重奏が初お目見えです。トランペットの長谷川智之さんにメンバーの選出と選曲をお願いしたところ、今回は中堅からベテランの方々がご出演下さいました。
プログラムは長谷川さんがMCでも触れていらっしゃいましたが、ホールの容積が小さいので爆音になりにくい曲と金管の良さを感じていただきたいとの考えから、前半はバッハ、ヴィヴァルディ、ヘンデルとバロック中心、後半はオリジナル曲1曲とガーシュウィン「ポーギーとベス」J.ゲール編からのセレクションという構成でした。実は私はハクジュホールには大音量にも対応できる適性が備わっているという自負がありました。というのも、その昔ブラスバンドにお使いいただいた際、舞台から溢れる程に管楽器が乗って「アルヴァマー序曲」を演奏しましたが、音が割れる事はありませんでした。また残響時間もそれほど長くないので音もシンプルに聞こえてきます。今回の公演を通して、金管アンサンブルにも非常に合うホールだという事を改めて実証出来たのではないでしょうか。ご出演の皆様もその音響の中で、ダイナミクスを楽しみながら気持ちよく演奏していらっしゃるようでした。細やかなパッセージも良かったのですが、金管アンサンブルらしいパイプオルガン的な重音もたいへん聴きごたえがありました。
これまで当ホールが管楽器、特に金管楽器のコンサートをそれほど多く主催してこなかったこともあり、金管楽器ファンへの訴求力が充分ではなかったかも知れませんが、ご来場頂いたお客様に喜んで頂けたことは充分伝わってまいりました。
打ち上げのお酒も皆さん美味しそうに飲んでいらっしゃいました。また演りたいねと!
2024年12月12日(木) 19:00開演
~N響メンバーによる室内楽シリーズ~ N響チェンバー・ソロイスツ
第7回 金管五重奏の煌めく響き
[出演者]
長谷川智之、山本英司(以上、トランペット)
今井仁志(ホルン)古賀光(トロンボーン)池田幸広(チューバ)
[プログラム]
G.F.ヘンデル(S.スチュアー編):オラトリオ「ソロモン」HWV 67 より“シバの女王の入城”
A.ヴィヴァルディ(J.ストーン編):協奏曲 ヘ長調 RV 310
J.S.バッハ(P.ハンナ編):パルティータ 第2番 イ短調 BWV 826より "シンフォニア"
A.ヴィヴァルディ=J.S.バッハ(D.ボールドウィン編):協奏曲 ハ短調 RV 565 / BWV 596
M.アーノルド:金管五重奏曲 第1番 op.73
G.ガーシュウィン(J.ゲール編):歌劇「ポーギーとベス」セレクション
Ⅰ.序奏~キャットフィッシュ・ロウ(なまず長屋)
Ⅱ.サマー・タイム
Ⅲ.女は永続きしねぇもんだ
Ⅳ.うちの人は逝ってしまった
Ⅴ.くたびれもうけ
Ⅵ.ベス、お前は俺のもの
Ⅶ.いつもそうとは限らない
Ⅷ.ニューヨーク行きの船がもうすぐ出航する
Ⅸ.おお主よ、出発します
[アンコール]
ジョン・アイヴソン編曲:「クリスマス・クラッカー」より A Carol Fantasy