原支配人による公演レビュー
【原支配人による公演レビュー】
2024年1月16日(木)第176回 リクライニング・コンサート
金子鈴太郎(チェロ)&岡田奏(ピアノ)
ここ数年連携を深めている一般社団法人Music Dialogueで「DUO PROJECT」をご一緒したこともあり、私の中でアンサンブルの最小単位がデュオ(二重奏)という意識が強まってきています。このことは一般的には意外と認知されていないようで、例えばブラームスのチェロ・ソナタはピアノとチェロのためのソナタと楽譜には表記されておりますが、チェロ・ソナタとだけ書かれたものを少なからず見かけます。両者が対等であることを多くの方に知っていただきたいと思っています。
今回、「リクライニング・コンサート」を金子鈴太郎さんにオファーした際に、岡田奏さんと共演したいとご希望がありました。岡田さんは、室内楽での考え方や数々の共演などで高い評価を得ているパリ国立高等音楽院の上田晴子先生に師事するために15歳で渡仏し、ピアノ科と室内楽科で薫陶を受け、岡田さんもまた室内楽に対する考え方が素晴らしいので、今回、金子さんと岡田さんのデュオでお願いいたしました。相性の良いお二人はかなり多くの共演回数を重ねていらっしゃいますが、「リクライニング・コンサート」では初お目見えでした。15:00公演は金子さんの解説が詳細にわたり60分の予定が90分近くになったものの、私が拝聴した19:30公演は、話をコンパクトにすると宣言され75分程度となりました。
お話の中で、2025年が没後50年にあたるショスタコーヴィチの「チェロとピアノのためのソナタ」を一つの軸とし、「リクライニング・コンサート」ということでお客様にリラックスしていただくコンセプトに沿ってドヴォルザーク「森の静けさ」がまず浮かび、選曲されたと伺いました。一方で1曲目のハイドン「バリトン三重奏のためのディヴェルティメント」と「森の静けさ」以外は「リクライング・コンサート」の主旨には沿っていないと思うとおっしゃっていましたが、ショスタコーヴィチは特徴的な奏法が印象深く、ロシアつながりでシチェドリン「カドリール」、そしてピアソラ「ル・グラン・タンゴ」と続き、アンコールにはポッパー「ハンガリー狂詩曲」を演奏頂き、リラックスというよりむしろお客様に興奮を与えるようなプログラム構成だったかもしれません。金子さんの超絶技巧の数々、岡田さんのチェロに寄り添う表現などホールの音響特性を十分に活かし極上の音空間になったのではないかと思います。Music Dialogueの芸術監督で指揮者・ヴィオリストの大山平一郎先生はじめ、皆様から大満足のコンサートだったとご高評をいただき、大変嬉しく思いました。
また、この日に前後して、12月に「リクライニング・コンサート」にご出演頂いたチェロの水野優也さん、ピアノの吉見友貴さんがMusic Dialogueアーティストに認定されており、Music Dialogue様との強い関わりを実感いたしました。
2024年1月16日(木)第176回 リクライニング・コンサート
金子鈴太郎(チェロ)&岡田奏(ピアノ)
19:30開演
[出演者]
金子鈴太郎(チェロ)&岡田奏(ピアノ)
[プログラム]
J.ハイドン:バリトン三重奏のためのディヴェルティメント ニ長調 Hob.Ⅺ:113
D.ショスタコーヴィチ:チェロとピアノのためのソナタ ニ短調 op.40
R.シチェドリン:カドリール
A.ピアソラ:ル・グラン・タンゴ
A.ドヴォルザーク:森の静けさ op.68-5
[アンコール]
D.ポッパー:ハンガリー狂詩曲