原支配人による公演レビュー

2021年07月04日 (日)
【原支配人による公演レビュー】
2021年6月18日(金) Hakuju New Style Live ピアノ四重奏&弦楽三重奏

8ヶ月ぶりのHakuju New Style Liveです。昨年3月中旬より、有観客コンサートがほぼ4ヶ月なくなりました。ハクジュホールも昨年5月は開館以来初の売上0円、衝撃でした。
有観客コンサート開催の目処が立たない中で湘南鎌倉総合病院の小林修三先生にコロナ禍におけるゼロリスクで考えうるコンサート運用のガイドラインを監修して頂き、昨年6月11日、業界ガイドラインが出た、まさにその日に都内で最初にコンサートを開くことができました。来場者は収容人数の半数以下、検温、アルコール消毒、エレベーターボタンはスタッフが押す、チケットレス入場、終了後エレベーターホールが密にならないよう分散退場等。
昨年、あの段階ではひょっとしたらかなり長い間フルスペックコンサートの目処が立たないのではないかという中で、どこかが何かしらの形でコンサートを開かないと、という使命感で開催致しました。
公演が中止になった日程に、仕込み期間の短いコンサートを行うのがNew Style Liveです。
昨年6月、7月に集中的に行い、ソロ、歌、四重奏と広げて、10月に弦楽八重奏を行い一旦終了しておりました。
今回は緊急事態宣言中で収容人数は上限半分までです。やや批判的な表現になりますが、根拠のない、しかも急なガイドライン変更に蹂躙されながらやっていますが、5月、6月もまともな券売が出来ないという事で貸出公演のキャンセルが続く中、久々にNew Style Liveをやろうという事になりました。
長い前段で恐縮です。
今回はN響ヴィオラフォアシュピーラー中村洋乃理さんと話し合い、このコンサートは座席を制限しているので収益は見込めませんが、変な話ですが逆に券売を意識せず、なかなか演奏機会がない曲を選択出来るということで、ヴァイネルというハンガリー人で、現ルーマニアのトランシルバニア地方の民族音楽から派生する楽曲が得意な作曲家の弦楽三重奏曲を取り上げ、さらにゲストにピアノというユニットでのコンサートになりました。
曲目はモーツァルト「ピアノ四重奏曲 第2番」、ヴァイネル「弦楽三重奏曲」、シューマン「ピアノ四重奏曲」。
全ての曲で音色が大きく変わる彩り豊かなコンサート。ホールを作る前からアマチュアオーケストラ団長をしておりますが、今なおクラシックの奥深さに驚くばかりです。ヴァイネルというまた知らない音楽家の素晴らしいメロディ、コンサートの後半にあの美しいシューマンの3楽章が現れ、このようなメロディを聴くと、これは私の完全な個人的主観ですが、毎日本業のコロナ対応はじめ、脇目もふらずにやっている所がありますが、その時間一種の立ち止まりというか、人としての感情が揺り戻される、思い出す。そして力が抜けて…でもそういう時間こそが、今このコロナ禍で人に必要な時間であり感情なのだろうと気付かされます。
そしてちょうど1年前に挙行したコンサート、ある種、戦地に出向くような覚悟で開催した日々も思い出されました。
今日の4人の出演者の方とは、私はそれぞれ個別にご縁がありましたが、この4名各々が横に糸を紡いで開催できたコンサート。新たなご縁に恵まれました。出演者の皆様にも改めて感謝申し上げたいと思います。

【Hakuju New Style Live ピアノ四重奏&弦楽三重奏】
2021.6.18 (金) 19:00開演
[出演]
石上真由子(ヴァイオリン)中村洋乃理(ヴィオラ)玉川克(チェロ)山中惇史(ピアノ)

[プログラム]
モーツァルト:ピアノ四重奏曲 第2番 変ホ長調 K.493
ヴァイネル:弦楽三重奏曲 ト短調 op.6
シューマン:ピアノ四重奏曲 変ホ長調 op.47