原支配人による公演レビュー

2021年05月26日 (水)
【原支配人による公演レビュー】
2021年5月14日(金) 第159回 リクライニング・コンサート 村松稔之 カウンターテナー・リサイタル 19:30公演

緊急事態宣言対応で荒波の上の小舟のように翻弄されながらホール運営をしています。4月25日~5月11日までの期間は、4月23日の政府発表でホールは無観客での開催要請がありました。無観客での開催はハードルが高く、ハクジュホールは元々5月1日~5日を会社の暦に合わせて休館日にしてありまして被害は都内ホールでも少ない方でしたが、お貸出の公演は全て延期になりました。ホール主催公演は白寿ビルで行っているハクジュ音楽教室の発表会も今年は中止とし、2年越しで日程設定した新シリーズ「Hakujuの歌曲 望月哲也 テノール」リサイタルは一旦中止、日程再調整中です。販売したチケットの返券の銀行振込手数料もホール負担、コンサートが飛んだという裏でどれだけの時間、お金、精神力を投じているかを見ているだけに、クラスター実証がないコンサート自粛要請は思いも寄らない、本当に厳しい政府指示でした。
前段が長くなりましたが、5月14日カウンターテナーの村松稔之さんの公演は10日の方針発表で人数を半分にして行って良いという方針が出たことと、リクライニング・コンサートシリーズでは元々座席数が半分の設定ですので開催することができました。
今回登場の村松稔之さんは若手カウンターテナーで、来年ドイツデビューも決まっています。そして伴奏はピアニストの圓谷俊貴さんというコンビでした。
リクライニングシートでお客様にリラックスしてもらうという主旨を完全にご理解頂いた選曲で1時間休憩なしのコンサートですが、それを2部制にして前半はバロックのリートでわざわざチェンバロを持ち込んで演奏していただきました。後半はシューマン「子供の情景」よりピアノソロと日本の歌曲を交互に演奏。ピアノソロの時も村松さんは見守るような形で壇上に佇むような演出でした。とても繊細で且つビジュアルもリクライニングのムードを演出する感じのコンサートに仕上がっていました。
私は夜の部に参加して終了後アーティストのお2人にご挨拶しましたが、やはり寸前まで開催出来るかどうか分からない状況でしたので不安はおありだったようですが無事に開催された喜びと、ご時世がご時世ですので完売という訳には行きませんでしたが、次回は満席でお客様を迎えたいという前向きな言葉も頂戴しました。
平時であれば終了後軽く打ち上げをして未来の夢や方向をお聞きして共有するところですが、今回は自粛致しました。
まだまだホール運営、それ以上に音楽家にとって厳しい日々が続きますが、ルールに則り、気持ちもお金も尽きないようにしながら頑張るしかありません。
クラシックの生音はこの時期何か感性を揺さぶられるような感じを受ける可能性高いです。音楽家も平時より一期一会的な感じで臨んで来られます。この時期だからこそ感染対策出来ているホールで生の音を聴きにいらして頂けたらと思います。よろしくお願いします。

【第159回 リクライニング・コンサート 村松稔之 カウンターテナー・リサイタル】
2021.5.14 (金) 15:00開演/19:30開演

[出演]
村松稔之(カウンターテナー)
圓谷俊貴(チェンバロ、ピアノ)

[プログラム]
~チェンバロと歌~
G.カッチーニ : 「新音楽」より
  第8曲 “アマリッリ” 
  第3曲 “甘いため息” 
G.カッチーニ : アヴェ・マリア
J.N.P.ロワイエ:「クラヴサン曲集」第1巻より
第14曲 “スキタイ人の行進” <チェンバロ・ソロ>
I.レオナルダ:モテット「情熱を称えて来なさい」op.20-12

~ピアノと歌~
山田耕筰(詞:北原白秋) : この道
R.シューマン : 「子供の情景」op.15 より
  第7曲 “トロイメライ” <ピアノ・ソロ>
中田喜直 (詞:金子みすゞ):こだまでしょうか
R.シューマン : 「子供の情景」op.15 より
  第3曲 “鬼ごっこ”<ピアノ・ソロ>
中山晋平(詞 : 吉井勇) : ゴンドラの唄
R.シューマン : 「子供の情景」op.15 より
  第10曲 “むきになって” <ピアノ・ソロ>
木下牧子(詞 : 岸田衿子) : 竹とんぼに
R.クィルター:5つのシェイクスピア歌曲 op.23
  第1曲 “もはや恐れるな、灼熱の太陽も”
  第2曲 “緑なす森の木陰で”
  第3曲 “若者と恋する娘が”
  第4曲 “もうその唇は向こうへ行って”
  第5曲 “ヘイ、ホウ、風も吹き雨も降った”

[アンコール]
カステルヌオーヴォ=テデスコ:「ショパンの前奏曲による3つのマドリガーレ」より
山田耕筰(詞:三木露風):赤とんぼ