原支配人による公演レビュー

2020年08月20日 (木)

【原支配人による公演レビュー】
2020年7月28日(火) 
Hakuju New Style Live バッハとコンテンポラリーの融合 15:00開演
今回の「New Style Live」は初のピアノ五重奏のレイアウト、また動画配信、そして有料配信ということへの挑戦でした。
今回のきっかけはヴァイオリンの成田達輝さんでした。彼は2012年にエリザベート王妃国際コンクールで2位を取った後の凱旋のCD録音をハクジュホールでやって下さいまして、ホールとしてはそれ以来のご縁。昨年オペラシティの企画「B→C (ビートゥーシ―):バッハからコンテンポラリーへ」で文字通り現代音楽とバッハを弾き分ける凄いコンサートをやったのですが、その室内楽版をやりたいという思いがずっとあったようです。こんな時でしか出来ない選曲をしたいという事で、とあるテレビ番組で共演された彼に賛同した素晴らしい弦楽メンバーとピアノの中野翔太さんが参加してのコンサートになりました。「バッハとコンテンポラリーの融合」と題したこのコンサートは、中々ないプログラムに仕上がっていました。
バッハ「フーガの技法」と現代曲を交互に挟み合いながら全12曲の演奏でした。
リハーサル中、挨拶で顔を出した時は、ジョン・ケージ「4分33秒」を演奏中にビデオ配信で途中から視聴された方に対して、音と動きがないから演奏中ということをどのようにお知らせするかという話をとても真面目に話されていました。また、今回の「New Style Live」の特徴として、紙のプログラムを配布しない(=現代曲の解説プログラムノートが書けない)という大きな問題がありましたが、そこはリハの時間に事前に成田達輝さんによるプログラム解説を映像で撮っていて、従前に曲目解説のYouTubeが上がっていたというのも斬新でした。
中々皆さんの演奏レパートリーにはなかった曲目が多かったと思いますが、コロナのせいかお陰か、皆が練習で合わせる時間も結構取れたようで、これもいつも多忙な皆さんからしたら奇跡的な話でした。
6月からコンサートを7本ほど主催で開催させて頂きましたが、2度目の客席で聴く事が出来たのもありがたかったです。
透明感がある感じのバッハと、ウェーベルンのような現代でも代表的な曲も入りながらも色々な技法奏法を使った楽曲があっという間に流れて行きました。前半最後には、楽器を舞台の上に置いて、水を容器に移し替える音を聴くという楽曲も入り、客席の通路にアーティストの皆さんが降りての演奏。これもかなり斬新でした。
正に出来上がりはバッハと現代の融合。バッハ&コンテンポラリーB &Cでした。
こういう曲構成の曲は色んな意味で難しいので演奏会に並ぶ事は難しいと思いましたが、こういう時期だからこそ、このメンバーで何日もリハーサルが出来ましたし、この時期しかないと言える、そんなレアなコンサートだったと思います。
当日もまた、ハクジュホールの歴史にページを刻んだコンサートになったと思いました。
Hakuju New Style Live バッハとコンテンポラリーの融合
2020.7.28 (火) 15:00開演
【出演】
中野翔太(ピアノ)成田達輝(ヴァイオリン)坪井夏美(ヴァイオリン)笹沼樹(チェロ)田原綾子(ヴィオラ)

【プログラム】※プログラムは写真をご覧ください。
J.S.バッハ:フーガの技法よりコントラプンクトゥスⅠ
ウェーベルン:弦楽四重奏曲作品28