原支配人による公演レビュー
【原支配人による公演レビュー】
2020年7月19日(日)
Hakuju New Style Live ~心が喜ぶ演結び 新しい出会いの形へ~ オール・ベートーヴェン・プログラム【初期+中期+後期】 14:00開演
“ウェールズ弦楽四重奏団”というミュンヘン国際コンクール入賞が東京カルテット以来というカルテットがいます。2013年、拠点を東京に移してすぐに縁が出来、2014年からレジデントアーティストとして3回演奏会を行ったご縁のメンバーですが、その後疎遠になっていたのですが、今回また色々な方のご縁の不思議さと最近のハクジュホールの動きを見て頂いていて、ファーストバイオリンの崎谷さんと話し合いをする事になりました。「熱い演奏の時に飛ぶ汗の飛沫の件がまだグレーなので」と話したら、崎谷さんから、「ウェールズはそういう演奏はしません」と返事が(笑)
オーケストラの苦境や再開に向けてはありますが、室内楽に関しては全くと言って良いくらいに遅れそうな感じだと話しも一致、そして弦楽四重奏をやりましょうという運びになりました。そこでもう少し踏み込んで行った時に、自分が関わり教えた若手の四重奏も入れて行きたいと伺いました。今回、“ウェールズ”の謝礼は要らないので、若手に謝礼を振り分けて欲しいというような話も出る中で電話を切りました。
そこから日程調整をして、実質的に動き始めたのは7月に入ってからでしたが、“ウェールズ”の敏腕マネージャーとホールのコミュニケーションが良く、7月5日には素材も揃い、曲も決まり、情報公開にまで到りました。凄いスピードでした。あと2つの団体名は“クァルテット・インテグラ”と“チェルカトーレ弦楽四重奏団”。両方とも本当に若手で、学生さん比率もとても高く、10代の方もいらっしゃいます。サントリーホールの室内楽アカデミーを出て、将来を嘱望されるカルテットです。
当日は約80名のお客様ご来場されました。日曜日で白寿本社ビルがお休みだったので、カルテット3組で楽屋が密にならないように、普段の会議室も解放し、楽屋は広く取りました。また、本番2日前にホール原館長の夫人からの寄贈によるサーモグラフィーが入口に設置されました。37度3分を超えると自動的にアラームが鳴るという優れものを入手しましたので、コンサートのエントランス付近のオペレーションもかなりスムーズになりました。
コンサートはオール・ベートーヴェン・プログラム。「弦楽四重奏曲 第5番」を“インテグラ”、「第8番」より抜粋を“チェルカトーレ”、休憩を挟んで「第15番」より抜粋を“ウェールズ”という構成でした。今年はベートーヴェンイヤーですので、平時に行えば非常に注目されたコンサートだったと思います。3曲違うメンバーなので、曲と曲の間は譜面隠しを取り替え、椅子の座部、ピアノ椅子の手が触れる場所は演奏終了毎に消毒をしたところが気をつけたポイントです。また汗飛沫を避けるためにいつもより距離を離して演奏して頂きました。
今回もまた、当日手伝いましたので舞台袖で聴いていました。客席で聴いていた訳ではないのですが、演奏自体は前半2曲共に若々しい、情熱ある、そして音がクリアな素晴らしい演奏でした。オーケストラと同時に弦楽四重奏を中心とした室内楽、特に室内楽を繁栄させないといけないという思いを持つ人が今般増えていて、四重奏に挑戦する若者が増えています。平常を取り戻したらまたご縁があると嬉しいと感じました。
休憩の後の“ウェールズ”はまた圧巻でした。クールながらも和音の響きなどは何度もゾクゾクしました。5年以上の間が空いたハクジュホールでの演奏でしたが、あれから皆さん都内のメジャーオケに入団して重たい役割を担いながら積み重ねて来られました。前に縁があった時の若手感が消えて風格が凄かったです。
終了後はカーテンコールで出演者12名が舞台上に!ほんの少しだけ舞台裏が混みましたが大丈夫だったと思います。
ハクジュホールでベートーヴェン四重奏を3組3曲。“ウェールズ”との再会、若手との出会いの1日でした。
Hakuju New Style Live ~心が喜ぶ演結び 新しい出会いの形へ~ オール・ベートーヴェン・プログラム【初期・中期・後期】
2020.7.19 (日) 14:00開演
[出演]
ウェールズ弦楽四重奏団
﨑谷直人、三原久遠(以上、ヴァイオリン)横溝耕一 (ヴィオラ)富岡廉太郎(チェロ)
クァルテット・インテグラ
三澤響果、菊野凜太郎(以上、ヴァイオリン)山本一輝(ヴィオラ)築地杏里(チェロ)
チェルカトーレ弦楽四重奏団
関朋岳、戸澤采紀(以上、ヴァイオリン)中村詩子(ヴィ オラ)牟田口遥香(チェロ)
[プログラム]
ベートーヴェン:
弦楽四重奏曲 第5番 op.18-5 (全楽章) クァルテット・インテグラ
弦楽四重奏曲 第8番 ‛ラズモフスキー第2番’ op.59-2 (1,2,4楽章) チェルカトーレ弦楽四重奏団
弦楽四重奏曲 第15番 op.132 (1,3,4,5楽章) ウェールズ弦楽四重奏団