原支配人による公演レビュー

2020年02月03日 (月)
【原支配人による公演レビュー】
2020年1月29日(水) カルテット・アマービレ BRAHMS Plus<Ⅰ>(19時開演)
2014年夏、ホールエントランスでベーゼンドルファー社からピアノを貸与され「第1回エントランスコンサート」をおこなった際のソリストがファーストヴァイオリンの篠原悠那さん、また、昨年好評のうちに終了した6年企画「チェロ・コレクション」第1回のゲストがチェロの若手、笹沼樹さんであり、「カルテット・アマービレ」メンバーとは結成前からご縁がありました。18年1月の「リクライニング・コンサート」にご出演いただいたり、同年10月のホール15周年企画「藤倉大 個展」でも世界初演を弾いて頂いたり、中さん、篠原さんには留学中もホールの主催公演にご出演いただきました。
このように、メンバーそれぞれと関わりがありましたが、笹沼さんとのお話の中で「東京で定期的に演奏がしたい」、「意外にブラームスを弾く機会がない」というお話がありまして、公演企画を考えたという経緯がございます。
1、ブラームスの弦楽四重奏、五重奏、六重奏、ピアノ五重奏、クラリネット五重奏をパワーが続く限りやろう
2、誰か必ずゲストを呼ぼう。弦楽器ゲストに関しては同世代より、上の世代に声を掛けていこう
3、ブラームスの弦楽四重奏の時には曲のカップリングに必ず五重奏曲以上を入れてゲストは呼ぼう
4、前曲に発掘物、演奏機会があまりない曲をコンテンポラリー含めて探そう
上記4点を当初スペックとして準備をして来ました。
そして第1回目は元東京カルテットメンバーで、アマービレの室内楽の師匠である磯村和英先生と、笹沼さんの師匠であり、サントリーホール館長である名チェリスト堤剛先生のお二方が出演を快諾して下さり、当日にこぎつけました。
ブラームス六重奏曲、ウェーベルンは決まっていましたが、中プロ四重奏を探す中で私から「滅多にないご縁だから“浄夜”も頼んでみたら?」という発案を笹沼さんが勇気を持って頼んでくださり、こちらも快諾。当日の重厚なプログラムが完成しました。
本番前から皆さんに思い入れがあったからか、ホールリハーサルを3回行うという入念なコンサートになりました。リハーサルではウェーベルンに関しても磯村先生からのご指導が入ったりしました。
本番当日のチケットは完売。NHKのカメラも入りました。
ウェーベルンの初期の甘い名曲の後、「浄められた夜」。ここまでのプロセス、子弟愛、色んな事が重なり、コンサートを観ながら聴きながら個人的には涙が出てしまいました。磯村先生とアマービレ、堤先生と笹沼樹さん、2つの子弟の愛でハクジュホールの夜は浄められたのでした……。全てが見どころでしたが、音バランスの素晴らしさと、ファーストチェロの堤先生のサウンドへの称賛の声で持ちきりでした。
ブラームス六重奏曲も皆さんホール音響も熟知していらっしゃることもあり、たいへん重厚でした。個人的な話ですが20年ほど前、ファースト・ヴィオラで演奏した経験もあり大好きな楽曲なので全ての音を聴き漏らさないように聴きました。
今まで素晴らしい企画に何度も立ち会えて、良い企画ほど終わった後に寂寥感というか、過ぎ去った時間に寂しさ、ああ、この素敵な時間はもう返ってこない、と感じた事が何度も何度もありました。しかし、この日のコンサートは成長の過程を私なりに応援し、ますますパワーアップするであろう「カルテット・アマービレ」と磯村和英先生、堤剛先生の大きな愛情を感じる事が出来たコラボを実現出来て、ああ、ホールを作って良かった、と心から感じる事が出来た素敵な夜になりました。
そして終演後、磯村先生がアマービレメンバーに金言。「長く継続していくために良い意味でもっとお互い音楽を主張して喧嘩しなさい」というお話も大変印象に残りました。
この企画は年に1度を目標に継続していこうと思っておりますので、来年以降もよろしくお願いします。

【カルテット・アマービレ BRAHMS Plus <Ⅰ>】
2020.1.29 (水) 19:00開演
[出演]
<ゲスト>
堤剛(チェロ)
磯村和英(ヴィオラ)
<カルテット・アマービレ>
篠原悠那(ヴァイオリン)北田千尋(ヴァイオリン)
中恵菜(ヴィオラ)笹沼樹(チェロ)
[プログラム]
ウェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章
シェーンベルク:浄められた夜 op.4
ブラームス:弦楽六重奏曲 第1番 変ロ長調 op.18
[アンコール]
ドヴォルザーク:弦楽六重奏曲 イ長調 op.48 から 第3楽章