原支配人による公演レビュー

2020年01月24日 (金)
【原支配人による公演レビュー】
2020年1月18日(土) 仲道郁代 ベートーヴェンへの道 ベートーヴェン 鍵盤の宇宙 第2回「ベートーヴェンとヘーゲル」(14時開演)

東京で新年最初の降雪を記録した日に、ハクジュホールもベートーヴェン生誕250周年の記念イヤー、初ベートーヴェン公演です。と言っても、この企画は半年前からのスタート。「ベートーヴェンとナポレオン」という刺激的な内容から始まったシリーズも第2回。今回はベートーヴェンと同じ年に生まれた「ヘーゲル」に焦点を当て、ベートーヴェンとは切っても切れない「哲学」をテーマにした内容でした。
それと、今回からはハクジュに2台置いてあるスタインウェイではなく、ヤマハのCFXのピアノを持ち込んでの演奏会でした。
曲目はベートーヴェンのピアノ・ソナタ 5番、14番「月光」、30番の3曲。
前半の最後に音楽プロデューサー浦久俊彦さんとのトークセッションで、ベートーヴェンとヘーゲル、ベートーヴェンとカント、ベートーヴェンと哲学という内容で盛り上がり、それぞれの曲の選択理由についても仲道さんが別途お話になる時間がありました。内容については諸説あるとのことでしたが、哲学の定義が様々ある中で、ベートーヴェンは本質を目指す、伝えたい事を伝えざるを得ない、大きな宇宙、神が存在するとか、あるいはまた、ほとばしる情熱をソナタ形式やフーガ形式などを使い構造的に伝える偉大な人である、と解釈出来る内容だったように感じました。
ソナタ形式ABAのBが1小節で終わる5番、宗教音楽のメロディを1楽章にちりばめながら2楽章を挟み3楽章で爆発させる神々しいまでの音楽「月光」。
そしてベートーヴェン死後、「永遠の恋人」という手紙が話題になり、誰に宛てたものなのかで諸説入り乱れる中で、候補の1人アントニー・ブレンターノの娘さんであるマクシミリオーネ・ブレンターノに献呈された30番の、構造音楽の基礎とされるベートーヴェンの音楽なのに、恋や愛を彷彿とさせる謎かけの想像が出来るパッセージの説明などは、コンサートをとても魅力的なものにしてくれました。
CD、レコードがない時代に、構造で伝えるという事で出てきたソナタ形式、人の力を信じて、人の力で音を積み上げていくイメージのフーガ。その構造と哲学が重ね合わさり、そこにベートヴェンの出したメッセージ、謎を紐解くような感じのコンサートになりました。
次回は「ベートーヴェンと北斎」。恐らく「ベートーヴェンと絵画」というテーマになろうかと思います。
次回のチケット売り出しは4月になります。ご興味ございましたら、是非いらしてください。
最後になりますが、ヤマハのピアノは搬入したものでしたが、音のメリハリをつけやすい、またハクジュホールの音響をフルに使える素晴らしいピアノでした。仲道さんも、日本のメーカーの素晴らしさについて、コンサート終了後にお話しされていました。

【仲道郁代 ベートーヴェンへの道 ベートーヴェン 鍵盤の宇宙 第2回「ベートーヴェンとヘーゲル」】
2020.1.18 (土) 14:00 開演
[出演]
仲道郁代(ピアノ/トーク)
浦久俊彦(ナビゲーター)

[プログラム]
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第5番 ハ短調 op.10-1
お話 ベートーヴェンと哲学(仲道郁代/浦久俊彦)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 op.27-2「月光」
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 op.109