アーティストインタビュー

2台ピアノならではの魅力的な響きをお届けします

近藤嘉宏、外山啓介
2022年2月8日、日本を代表するピアニストとして国内外の有名オーケストラと共演を重ねる近藤嘉宏さんと、リサイタルツアーで全国を駆け巡る今注目のピアニスト・外山啓介さんによる2台のピアノによるサロン・コンサートを開催。
初共演となるステージに向けて、2人の想いを伺いました。

この企画は、近藤さんとやり取りをするなかで、2台ピアノのコンサートならオリジナル性もあり、プロジェクトとしても面白いのではないか、ということから生まれたものでしたね。

近藤

ええ。2台ピアノでの共演は魅力的ですが、ピアニスト同士は知り合う機会が少ないうえ、息を合わせて弾くという機会があまりないように思います。それでもいくつかの経験からいうと、ソリストが2人なので譲り合わない雰囲気になったり、逆に主従関係になったりしがち。イーブンな形で共演できないと、どこかでフラストレーションがたまってしまいます。だから、お互い楽しく、力を出し合える相手と共演してみたいな、と思っていたんです。

外山さんとは、初共演ですよね。

近藤

そうなんです。外山さんと直接の面識はなかったのですが、活躍ぶりを拝見するなか共演してみたいと思っていたところ、ちょうどスタッフの方から「外山さんが絶対いいと思いますよ!」という話をいただき、決まりました(笑)。

外山

近藤さんのことはいろいろなところでお見掛けしていた大先輩なので、お話をいただいたときは、「え、僕でいいんですか?」という感じでした。

このホールで、新しい方と共演の機会をつくれることは嬉しいです。基本、ピアニストの方は、他の楽器と違って、長時間誰とも口をきかず一人で練習しているわけですから、孤独ではないですか?

近藤

僕の場合は、一人がいいですね。というのも、ニュアンスを変えて弾いた場合、それをどう変えたのかという方法論に置き換えないと、再現できないからです。本番で大きくブレないために感覚的に感じたことを何度も検証していく作業をするので、時間がかかるんです。その作業をしているうちに、何か深い部分、もっと複雑な感情の襞に気づいて、ひとつ抜ける演奏ができるように感じています。

僕はオーケストラが好きなので、「Hakujuにオーケストラがやってくる」というテーマのもと、オーケストラのメロディーがホールに響く企画を考えていますが、今回は、ブラームスの交響曲 第4番を演奏していただくことになりました。ブラームス自身の編曲による2台ピアノ版ということで、楽しみです。

近藤

まさに2台ピアノのための交響曲です。ファーストピアノもセカンドピアノもない、絶妙な割りふりだと思います。

外山

両方主役ですね。いい意味で、キャッチボール的なところがあると思います。

近藤

そう。「今投げたね!それをうけて返すね!」という感じ。その楽しさがわかる作品であると同時に、お互いに支え合う響きにも注目で、どんな色を創り出せるか楽しみです。

外山

そう思います。同じ曲を同じ風に2回弾いても、絶対に同じにはならない。だからこそ、本番、その場で生まれるものを大事にしていきたいと思っています。

ピアノ曲としてよく知られている、ドビュッシー「月の光」の2台ピアノ版も演奏されるのですよね。

近藤

そうなんです。シンプルでありながら、さらに色彩感が増したお洒落な編曲になっていて、素敵ですよ。

外山

以前、僕の師匠が教えてくださったのですが、月は太陽の真逆だから、死と隣り合わせじゃなきゃいけないよと。月の光は美しいけれど、どこかで諦めや寒色系をイメージさせる、そんな原曲への敬意を込めて弾けたらと思っています。

お二人の共演で創り上げる音色を楽しみにしています。

※株式会社白寿生科学研究所ユーザー情報誌「ヘルシーメイツ」2021年冬号から転載